まにょっこ☆まこりん プレストーリー

■04

 唐突に寒気を覚えて、ぶるっと体が震えた。
 虫の知らせ、でも言うんだろうか。おれのこういう予感は、ほとんど外れたことがない。
 霊感とか、超能力とか、そういう類のものはあまり信じたくはないが、子供の頃からなんとなく、目に見えない何かを感じ取る能力がおれにはあった。
「早く家に帰った方が良さそうだな……」
 あえて口に出したのは、おれの焦りがそうさせたのかもしれない。
 少し前から、なんとなく覚えていた違和感。
 ――住宅街を歩いているはずなのに、さっきから人一人、車一台通らない……。
 会社帰りのサラリーマンは見かけなくても、部活帰りの学生の一人や二人、すれ違ってもいいはずだ。
 さっきから、空気もやけに重たく感じて、息苦しい。
 体にまとわりつくような風が背中から吹いてきて、終始生暖かい。
 頭の中で警鐘が鳴っている。
 このまま振り返らず、真っ直ぐに、だけど決して焦らず、かつ急いで家に帰らないと、よくないことが起こる気がする。
「千里くん」
 そう思っていたのに、耳慣れた声が聞こえた瞬間、おれは反射的に振り向いてしまっていた。
「み、宮間か。お前、どうしてこんなとこに……」
 おれを見る宮間の表情を見て、二の足を踏んだ。
 奴は、知り合ってから今日まで、一度も見せたことのない顔をしていた。
 例えるなら、飢えた獣が大好物を前にしたときのような、とでも言えばいいだろうか。
「千里くん……僕、君に伝えたいことがあって、来たんだよ」
 口はニタリとした笑みを形作っているのに、目だけをギラつかせたまま、にじり寄ってくる宮間。
 異様な圧力を感じて、思わず一歩後ずさった。
「……どうして逃げるの?」
「逃げてなんていねえ、いねえが……」
 口にするのを、少しためらう。
 本来なら、まるで意味のわからない一言だけど、おれ自身の感覚を信じるなら、聞かずにはいられない言葉。
 どんな反応が返ってくるか不安に思いながら、ゆっくりと口を動かす。
「お前、誰だ?」
「……ふ、ふふ、あはは! 誰って、僕は宮間だよ? どうしちゃったの?」
「確かに、お前は宮間みてえだけどよ。おれの知ってる宮間とは違う感じがすんだよ。なんか『中にいる』感じがするしな」
 そう言った途端、僅かに宮間は顔をしかめて、直後、喜悦に顔が歪んだ。
「すごい、千里くん。わかるんだ。はは、ますます欲しくなっちゃった!」
「欲しい……?」
「うん。千里くん、僕、千里くんが好きなんだ」
 本来なら、とても嬉しい言葉のはずだ。
 言ってくれた相手が仲の良い友人なら、尚更。
 しかし、今の宮間が相手では、素直に喜ぶなんて無理だった。
 とはいえ、そう言われたからには、何かしら返事をしないといけない。
「おれも、お前のことは好きだよ。これからも友人として、仲良くしていきたいって思ってる」
「ありがとう。でも、違うんだ。僕はもう千里くんと友達でなんていたくないんだよ。それ以上の関係になりたいんだ」
「それ以上って……おい! おれたち、男同士だろうが!」
「あっははは! うん。そういうと思ってたよ」  当たり前の返答を、宮間はバカにしているかのようにケタケタと笑い飛ばす。
「うん。わかってたよ。だから無理やり僕のモノにしちゃおうって決めてたからね」
 ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。今のこいつに何を言っても無駄だ。
 このままここにいたらだめだ……!
 そう思うや否や、おれは踵を返して走り出そうとする。
「逃がさないよ」
 何かに足首を掴まれて、地面にすっ転んだ。
 立ち上がろうとしながら自分を掴んだものを見て、目を見開く。
 宮間の口からてらてらと光った舌が伸び、それがおれの脚に巻きついていた。
「な、なんだよこれ!? 気色悪い……!」
「驚いた? 今の僕はこんなことも出来ちゃうんだ」
 獲物を捕食する軟体生物のように絡みついてくる舌が幾本も伸びてきて、立ち上がれずにいるおれの体を更にきつく締め上げてくる。
 かと思うと、その先端が服の中に、にゅるりと侵入してきた。
「ひゃっ!? や、やめっ!」
 ぬめった感触が直接肌を刺激してきて、びくりと体が震えてしまう。
 そんなおれに構わず、触手は肌の質感を確かめるように這いずり回る。
「み、宮間ぁ……どうしてこんなこと、んっ……くっ! おれたち、友達じゃねえのか……!?」
「友達だよ。でも、千里くんのことがホシイから、友達じゃない関係になりたいんだ。ふふ、まずはこっちからかな」
 舌がぐるりと持ち上がり、おれの服をまくり上げる。
 他には誰もいないとはいえ、こんな野外で、無理やり服をめくられたりしたら、
(は、恥ずいなこれ……くっそ)
 顔が熱くなっているのがわかる。
 裸をじっと見つめられるなんて、普段はそうないから、余計に。
「わあ、すごい、可愛い乳首……色も綺麗だし……小さい花の蕾みたい」
「なにまじまじ見ながらアホなこと言ってんだ! このっ、いい加減に離せ!」
 拘束から逃れようと、体を精一杯よじってみる。
 だが、舌の力は予想以上に強く、粘液が余計に体に絡みついてくる。
 その粘った液をすり込むように、おれの胸を舌がぺろりと軽く舐めてきた。
「ふぁっ……!」
 ぴりっ、と軽く電気が流れたような感覚に、声が漏れる。
(な、なんだ、今の。なんかちょっと、ヘンだった)
 風呂のときに自分で体洗う時に触ったりしても、特に何も感じたりなんてしないのに……。
「今、少し気持ちよかった?」
「……! んなわけなっ……くああっ!」
 否定しようとしたそのとき、舌の先端がおれの胸に、ついばむように触れる。
 舌が乳首に触れるたびに、そこから痺れるような感覚が広がって、びくんっ! と体が反応してしまう。
 やっぱり、ちょっと触られただけでこんなに体が熱くなるなんて、おかしい。
「おまえ、おれに、なにした……?」
「ふふ……千里くんに気持ちよくなってほしくてね。僕の唾液……これを塗ると、とってもえっちな気分になるみたいなんだ」
 さっきからやけに体が敏感なのは、そのせいか。
 口から漏れる吐息も、やけに熱い。
 自分でするときだって、こんな風にはならなかった。
「乳首、どんどん硬くなってきてる……ほら、こんなにぴんと立っちゃって、とっても可愛くて、ちょっとしょっぱくて、おいしい」
「はぁ、はぁ、んぅ……だ、黙れよっ……くぁっ!」
 宮間はおれの乳首を軽くつまんだり、形を確かめるように舌の上で転がしてみたりと、やりたい放題だ。
 こんな現実感のないシチュエーションで、自分の意志と関係なしに発情させられて、体中を舐められて、泣きたくなるくらい、情けない。
「も、もうやめてくれよ……お前は、こんなことする奴じゃねえだろ……?」
 おれの知っている宮間は、気が小さくて煮え切らないところもあるけど、他人を気遣える優しい男だ。
 こんな大それたことが出来る奴じゃ――――
「千里くんのせいだよ」
「お、おれの……?」
「そうだよ。僕の気も知らないで、肩組んできたり、間接キスだって! 男のくせに、着物着て着飾ったりしてるし!」
「なっ……! それはおれの趣味を馬鹿にしてんのか? おれ悪くねえだろ……!」
「そんなことない! 千里くんが可愛いのがいけないんだ! 男なのに可愛いなんて、いけないことなんだ!」
 か、可愛い? カッコイイじゃなくて、可愛いって言ったのか?
 こいつ、もしかしてずっとおれのこと、そう思ってたのか?
「そんなこと言われたって、おれにはどうしようも……」
「わかってる。千里くんは何もしなくていいよ。するのは僕の方だから。千里くんも、期待してるみたいだしね」
 ニタリと笑う宮間の視線の先には、おれの意志に反して膨らんだ股間があった。
 スパッツの生地を内側から強く押し上げてきている。
 もっこりと形が僅かに浮かび上がってしまっていて、自覚した瞬間、あまりの恥ずかしさに言葉を失いかけた。

 

「こ、これはっ! 期待とか、そんなんじゃねえ! こんな風にされたら、多分、誰だって……!」
「そう言う割に、さっきから抵抗しなくなってきてるんじゃない?」
 確かに言う通りだが、それは宮間を受け入れ始めているわけじゃない。
 ただ、なんだかのぼせたような感じになってて、体に力が入らないだけだ。
「普段あんなに気の強い君が、ほとんど無抵抗でされるがままなんて、なんだか興奮する……ねえ、そろそろこっちも、いいよね?」
 言いながら、スパッツに指をひっかけてくる。
「や、やめろ、おま、なに脱がして……っ」
 ズルズルと焦らすように少しずつ脱がされて、素肌が晒されていく。
 だめ、だ……見られたくないのに、力が全然入らない……。
 そして、下着ごとスパッツが取り払われて、興奮したおれ自身がぶるんっ! と飛び出した。
「はああ……! これが千里くんの、オチ○チンなんだ……すっごくえっちな形になってる……」
 ついに、下半身を丸出しにさせられてしまう。
 脚を広げられて、股を閉じることも出来ず、元気になってしまっている恥ずかしいところを余すところなく見られている。
「み、見るなあ……えっちなんかじゃねえよ、バカやろぉ……っ」
 敏感な部分をじっと見られているせいか、反論にも力が入らない。
 荒い呼吸を隠そうともせず、宮間はおれの恥部にぴとっと触れた。
「うあっっ!? さ、触んなあっ!」
 一瞬触られただけで、腰全体に痺れるような快感がはしった。
 こんなんじゃ、軽くしごかれただけで、すぐイッちまう。
 それがわかっているのか、宮間は手の中で軽くもみほぐすように、おれのチ○コをマッサージしてくる。
「あ、っくう! はぁ、はぁ、んんっ! そんな風にされたら、すぐ出ちまうっ……!」
「そのつもりだからね。僕の手で気持ちよくしてあげる。早く恥ずかしいイキ顔、見せてほしいなあ」
 ああ、やっぱりこいつに何を言っても無駄だ。
 おれが誰にも見せたことのない恍惚の表情を見るまで、責めの手を緩めるつもりはないだろう。
 そうはさせじと、必死に体を硬直させて耐える。
「はああ……はああぁぁぁぁ……う、くぅぅぅぁぁ……!」
 ほんの僅かな時間なのに、汗で額が滲んできた。
 チ○コの先端を引っかかれると、それだけで体が跳ね上がる。
「我慢しても無駄なのに。君はもう僕にイカされちゃうんだから。ふふっ」
 膨らんだ竿の感触を楽しむように、ふにふにと手の中で弄ばれる。
「んぁ……は、ああ……ひっ! っく、んくっ、んん! も、もうやめろっ……もうやべえんだって……っ」
 裏スジの辺りが擦られる度に、びくりと全身が硬直し、ぞぞぞと快感が背中から這い上がってくる。
 耐えるのに精一杯で、もう言葉を紡ぐ余裕がなくなってきていた。
「ちょっと触るだけでカラダぴくぴくさせちゃって……可愛いなあ千里くんは。ほーら、くりくり~」
「あああああ!!」
 先走った汁をまぶすように、先端をぐりぐりとされて、嬌声をあげてしまう。
 おれのカラダがオモチャにされている。宮間の欲望を満たすだけの、淫らな玩具に。
 そんなの、そんなの……!
「強情だね。それなら、こっちも一緒に味わわせてもらおうかな」
(こっち……?)
 これ以上どこを辱めようというのか……そんな風に思っていたおれの肛門に、舌がぬるり、と侵入した。
「んぁっ……!? な、なにしてっ! んあああーーっ!!」
 未知の感覚に、頭がぐちゃぐちゃになって、何も考えられなくなった。
 一瞬遅れてから、衝撃に耐え切れず、体がぴんっと弓なりになる。
 し、尻の中で生暖かい何かが、にゅるにゅる動いてやがる!
「あはっ、あったかくてきつきつだねぇ。女の子みたいな声、もっと聞かせてよ!」
「お、女の子みたいってぇ……っ、あぁっ、い、いうなあっ……うあっ、あっ、ん、んんぅぅっ!!」
 自分でもまともに見たことのないところに舌をねじ込まれて、体の隅々まで舐め回されて。
 体の奥底から、抗いようのない何かが物凄い勢いで迫ってきた。
「ひぐぅぅっ!! やめっ、もうこれ以上動くなぁっ! 抜け、抜けよぉぉ!!」
 体をじたばたさせながら叫んでも、舌はうねうねとのたうって、おれを味わうのをやめようとしない。
 おれの尻から透明な汁が溢れ出て、ぐっちゅぐっちゅと卑猥な音をさせながら、出たり入ったりしている。
「だめなんだよぉ! もう気持ちよすぎてっ!! そんなにされたらもうだめでっ! ひぃっ! んぐぅぅぅっ!!」
 ついにおれは『気持ちいい』と言ってしまった。
 恥ずかしくても、屈辱的だろうとも、気持ちいいものは仕方ないんだ……そんなことすら思いながら。
「もう無理! 我慢出来ない! きてる、もうイッちまう! うあああっ! くぁぁぁっ!」
「いいよ、早くイッて! 生まれてから一番恥ずかしい顔、僕だけに見せて!」
 舌の動きが一層激しくなり、おなかの裏側辺りを押すようにしながら、激しくかき回してくる。
 宮間の手の動きもそれに合わせて、おれのチ○コを強くしごきあげてくる。
 下半身の底で、くすぶっていたモノが一気にせり上がってきた。
「あっ!! だめだっ、もうっ……う、ううううああーーーーーっっ!!」
 ビュクッ! ビュクッ! ビュビュッ!
 我慢の限界を越えた分が、噴水のように飛び出た。
「! やだ、こんな、こんなああっ!! 気持ちぃぃぃいい!!! あああーーっ! すごいいいい!!」
 びゅるっと精液が出るたびに、全身が快楽に震える。
 一番はしたないところを見られてしまった羞恥と、無理やり絶頂させられた屈辱、我慢に我慢を重ねた快感がないまぜになって、頭がぐちゃぐちゃだった。
 宮間に全部見られている……そんなこと、考える余裕もなかった。
「あっ、あ、ううっ、く、ふぅぅっ……ハァッ!」
 絶頂の余韻で、ピクピクとチ○コが打ち震え、その度にねっとりした汁がにじみ出てくる。
 夢心地のおれを、宮間はウットリした顔で見下ろしたまま、指先についた精液をぺろりと舐めた。

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